白鳥正夫の
えんとつ山
ぶんか考

 フォーラムでは、地域が支える世界遺産への取り組みを説き、法要では法衣を身にまとい勧進の役を担っていました。知床の旅を通じ、立松さんの実践力を目の当たりにし、今こそ問われる絆の大切さや、地域の自立を痛感したのでした。
 
 現地には日本の世界文化遺産第1号である法隆寺の管長や、京都の世界文化遺産、金閣・銀閣寺を擁する相国寺派管長ら全国各地、地元から300人を超す人たちが集いました。知床の地に響く読経を聞きながら、一人の作家が地域再生に果たした役割に感心し、立松さんの真骨頂を垣間見る思いをしたのでした。
 当サイトで既報(2月15日)ですが、新居浜文化協会60周年記念の集いが9月13日に迫りました。
記念講演に作家の立松和平さんを迎えます。立松さんのプロフィールを紹介します。

立松和平さんのプロフィール
                「共生の風景」を旅する立松和平 

 新居浜文化協会60周年記念の集いの基調講演にお招きした立松和平さんは、日本を代表する行動作家です。奄美大島、石垣島、四万十川、輪島、白川郷、尾瀬、足尾、白神山、知床……。 美しい島々の集まりであるヤポネシア(日本列島)の各地を繰り返し旅しています。土地に根を張って生きる人々との出会いを求め、そこに息づく自然や人々を書き綴ってきました。開発で破壊され、過疎化で荒廃した自然環境や、薄らぐ家族・地域の絆など、忘れかけた日本人の遠い記憶を呼び起こすかのように「共生の風景」を求め旅し、書き続けているのです。 

 今回の集いのテーマである「絆で築こう故郷の文化力」の趣旨に沿った立松さんの講演のタイトルは「自然との共生、故郷の再生」です。講演の前日、新居浜市が世界遺産をめざす別子銅山の産業遺産が残る東平、端出場地区などにも初めて足を踏み入れました。祖祖父が働いていた足尾銅山を取り上げた著書もある立松さんは、別子銅山にひとしお興味をもたれたのでした。

 今年6月末、立松さんは世界自然遺産に登録され5年目を迎えた北海道・知床にいました。毎年この時期、立松さんは知床を訪ねます。この山里に、立松さんの尽力で造られたお堂があり、その法要のためです。筆者は立松さんの誘いもあって、15周年を迎えた節目の例祭に出向いてきました。単に法要だけでなく、前日には「知床世界自然遺産フォーラム」が催されました。

 立松さんは学生時代に知床を知り、20数年前にテレビの仕事で取材してから山荘を買い求めるほどの入れ込みようです。その魅力について、立松さんは「知床にはヒグマやオオワシ、トドなどの自然生態系が残っているだけでなく、入植した開拓民が自然と共生し細々と生きているのです。漁師の立場で言えば、熊は熊を生きている、人間は人間を生きなければいけないということです。この点において、知床では本当の価値があります。人間の生態系があって漁師がそこで生活している点がすばらしいのです」と話しています。

                                               
                                    

                                                             (文 白鳥正夫)
「新居浜文化協会60周年記念の集い、
           9月13日に」
    
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