■新居浜文化協会創立60周年記念の集いで
 講演される立松和平さん(田尾忠士さん撮影)
■瑞応寺を訪ねられた在りし日の立松さん
 

白鳥正夫の
えんとつ山
ぶんか考

 作家の立松和平さん(62歳)が2月8日に急逝されました。偲ぶ会が3月27日に東京の青山葬儀所で営まれますので、馳せ参じなければと思っています。昨年暮れには平山郁夫画伯(69歳)が亡くなられ、2月2日に「お別れ会」が厳かに営まれ献花をしてきたばかりで、二重の悲しみとなりました。

 立松さんは日本を代表する行動派作家としてますます円熟期の活動が期待されていただけに無念です。昨年9月、新居浜文化協会創立60周年の記念事業にお招きし、ご講演いただいておりました。私にとっても長年ご厚誼をいただき、数々の薫陶を与えてくださったおり、遺された言葉やご功績をあらためて記し、哀悼の意を捧げたいと思います。

  立松さんとは1992年、石川県の門前町にお呼びしてから随時、東京や大阪・奈良でお会いしてきました。一昨年暮れに親鸞賞を受けた時には京都へ駆けつけ、昨年夏には立松さんの誘いもあって、知床に造営したお堂の15周年の例祭に出向きました。近年は石鎚山など霊峰登山を続けるなど、その精力的な行動力が体に無理を生じていたのでしょう。ご夫人とも何度かお会いしており、「痛惜の念でいっぱいです」と長文の弔いのテレックスをお送りしました。  

  立松さんは日光市足尾町で毎年4月に開かれるNPO法人「足尾に緑を育てる会」の植樹デーに毎回参加するなど自ら現場に足を運び、自然保護や環境保全を訴え続けていました。60周年の集いにも前日に新居浜に入り、別子銅山の遺産のある東平地区にも足を運び、荒廃した山に植林事業をした先人の英断に感心されていました。こよなく愛した知床について「クマはクマを生きている。ヒトもヒトを生きなければいけない、ということです。知床ではこの点に本当の価値があります。人間の生態系があって漁師がそこで生活している点がすばらしいのです」と強調されていたのが印象的です。  

  平山、立松両氏の急逝で拙著『無常のわかる年代の、あなたへ』へ取り上げた8人の識者のうち、2人欠けました。世の中の儚さと無常を痛感する次第です。
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「立松和平さんの急逝を悼む」